イワタニレポート

水素エネルギー社会の実現に向けた取り組み

2021/10/28

CO2フリー水素社会に向けた取り組み②

イワタニレポート9月号では、CO2フリー水素製造に向けた取り組みとして、大阪府堺市の液化水素製造プラント「ハイドロエッジ」を活用した取り組みや、バイオマスを原料とした発電およびグリーン液化水素製造事業について紹介しました。今月号では、CO2フリー水素を海外で大量に製造し日本へ輸送するための取り組みを紹介します。
政府が昨年12月に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において水素産業は、「新たな資源と位置づけて、自動車用途だけでなく、幅広いプレイヤーを巻き込む」と明記されています。また、2050年までの目標として、コスト面では、化石燃料に対して十分な競争力を有する水準、導入量は2030年に最大300万t、2050年に2,000万t程度を目指すと示されています。このロードマップを実現するため、現在、様々な取り組みが動き始めています。

液化水素運搬船のイメージ

液化水素サプライチェーンの商用化実証

当社は、川崎重工業株式会社の100%子会社である日本水素エネルギー株式会社、ENEOS株式会社とともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」に対して、「液化水素サプライチェーンの商用化実証(以下「本実証事業」)」を提案し、採択されました。
本実証事業では、水素の大量消費社会を見据えCO2フリー水素サプライチェーンの本格的な社会実装の取組みの一環として、年間数万トン規模の大規模な水素の液化・輸送技術を世界に先駆けて確立し、水素製造・液化・出荷・海上輸送・受入までの一貫した国際間の液化水素サプライチェーン実証を行います。
具体的には、16万m3(4万m3×4基)クラスの液化水素タンクを搭載する液化水素運搬船や、5万m3クラスの陸用の液化水素タンクなど商用化(水素供給量:20万トン/年以上)を見通すために必要な大型設備を整備し、2030年30円/Nm3の水素供給コスト(船上引き渡しコスト)の実現を目指します。今後、水素源、実証場所、輸送量を含め、本実証事業を行う上で最適な主要設備・仕様・基数などは、様々な関係者との協議を通して決定していきます。

  • ※16万m3の液化水素運搬船一船で、10万台以上のFCVが1年間に必要とする水素を運ぶことが可能です。

「液化水素サプライチェーンの商用化実証」事業イメージ

出典:日本水素エネルギー(株)など

日豪間での大規模なグリーン液化水素サプライチェーン構築

当社は、川崎重工業株式会社、関西電力株式会社、丸紅株式会社および豪州を拠点としたエネルギー・インフラ企業であるStanwell Corporation Limited、APT Management Services Pty Ltd.,の計6社で、豪州クイーンズランド州グラッドストン地区において再生可能エネルギー由来の水素を大規模に製造・液化して日本へ輸出するプロジェクトについて、事業化調査を共同で実施しています。
本事業は、長期安定的かつ安価な水素製造および供給を行うことを目指しており、2026年頃に100t/日規模以上、2031年以降に800t/日以上の水素生産規模を想定しています。
現在の日本の液化水素生産量は最大30t/日であり、2031年以降、800t/日以上の生産規模は現在の日本の約26倍の生産規模となります。

事業想定
開始時期
水素
製造規模
想定再エネ
必要量
2026年~ 100t/日以上 1GW程度
2031年~ 800t/日以上 7GW以上
水素製造拠点のイメージ

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