現在、産業界で用いられている水素の製造法は、ナフサ、メタノール、天然ガスなどの炭化水素系原料を水蒸気改質する場合と、食塩電解の副生ガスや水素成分を多く含むコークス炉ガス(COG)を精製して得る場合がほとんどです。イワタニは50年ほど前から、主に副生ガスやCOGを高純度に精製して得た水素を、ユーザーの使用量に合わせてシリンダー、カ-ドル、長尺容器に高圧充填して供給するオフサイト方式で圧縮水素販売事業を行っていますが、近年では、液化水素による供給も増え、加えて、顧客企業の敷地内に水素のオンサイト供給設備を建設し、供給からメンテナンスまでを当社が一貫して管理するオンサイト供給も行っています。
現在の外販水素市場の規模は、日本産業・医療ガス協会(JIMGA)の統計で年間約1億4000万~6000万m3で推移しています。これまで市場から水素を購入してきた主要ユーザーが自家生産する方法であるオンサイト供給方式を選択した時期もありましたが、原料費の上昇や自ら製造する生産量の上下動から再度水素ガスの購入に切り替えたり、供給に柔軟性のある液化水素が登場してきたりして、その量は変動しています。規模、経済性、保安面やフレキシブルな生産を考慮して、水素の供給方法は、産業ごとに対応が異なってきています。
水素の原料ソースである食塩電解や石油精製の業界では工場縮小や再編の動きが活発であり、将来にわたって原料水素の確保が安定しているとは言いにくい面もあります。しかも、通常ガス体で供給される圧縮水素の輸送コスト負担もあるため、価格メリットのあるオンサイト供給方式が伸びるとみられた時期もありました。しかし、将来的に、燃料電池車用途をはじめ順調な成長が予測される水素需要を考えるとき、オンサイト供給方式もまた万能の供給方式ではなくなっています。生産量の変化が頻繁にあり、国内外で生産バランスを考える業種や原燃料の高騰の影響を嫌う企業は、圧縮水素や液化水素供給の柔軟性に再び注目しているのです。
このため、圧縮水素よりも大量輸送が可能な液化水素による供給が大いに注目されています。イワタニでは1978年、兵庫県尼崎市に全国で初めての液化水素の商業プラントを建設して以来、ユーザーへの供給を続けていますが、2004年から、JHFC(水素・燃料電池実証プロジェクト)の一環として建設された新日本製鐵君津製作所液化水素製造設備で、製鉄副生ガスであるCOGを冷却して液化水素を製造する共同研究にも参加しました。このCOG水素は将来の水素源として有望視されており、製造された液化水素は有明水素ステーションでも運用されました。また2004年4月、堺LNGと合弁でハイドロエッジを設立し、大阪府堺市に6000 /h生産能力の日本最大級の液化水素プラントを稼働させ、2006年から他社を含めた既存設備の数倍規模で液化水素の生産を開始し、液化水素の民生利用に積極的に取り組んでいます。
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