イワタニの水素ロード

イワタニと水素の出会い
捨てられていた水素に着目

水素との出会いは、1941年。工業生産の過程で副次的に発生しながらも、空気中に捨てられていた水素に着目し、水素ガスの販売を始めたことがきっかけでした。当時、水素は油脂メーカーなどの自社消費以外では、溶接やアドバルーン、気象観測用などに使われるに過ぎず、その多くが空気中に捨てられていました。しかし、創業者 岩谷直治は水素の秘められた可能性を誰よりも先に見出し、新たな時代に役立つものとして育てるという信念のもと、取り扱いを開始。現在に至るまで80年以上の間、水素の製造・供給・研究開発を行ってきました。

1941

水素ガスの自社製造を開始

1950年代後半、経済の発展により一般家庭に家電が急速に普及し始め、大量生産・大量消費の時代に突入したことに伴い、水素の消費量が急増し、油脂メーカーからの水素の調達が困難になりました。新たな仕入れ先として、大阪曹達(株) (現 (株)大阪ソーダ)尼崎工場で苛性ソーダ製造時に副生される水素に着目。1958年、同社尼崎工場の一角に、水素を製造する大阪水素工業(株)(現 岩谷瓦斯(株))を設立し、水素の取扱量が約7倍になりました。それにより、水素を大量に必要とするトランジスタラジオの製造を始めた家電メーカーへの販売が増加し、「水素といえばイワタニ」と呼ばれるようになりました。

1958

水素ガスの大量輸送時代の幕開け
水素トレーラーを開発

トランジスタに使うゲルマニウムの精製に水素が使われたことが起爆剤となり水素需要が急増。当時は7m3のシリンダーに高圧で水素ガスを詰めて運び、注文量の多いお客さま向けにはシリンダーを10本単位などで束ねて供給していましたが、さらなる輸送体制の強化が課題となっていました。
当社は、水素を大量に運べるようトレーラーの開発に着手。50m3長尺容器を22本組みし、1,100m3の水素を一度に輸送できる水素トレーラーを完成させました。その後、荷役作業の効率化を図るスライドローダーの開発や、1969年には容器の改良によって2,100m3を輸送できる水素トレーラーを開発するなど、着々と輸送体制を強化していきました。

1960

液化水素製造プラントが完成

1965年、エネルギーとしての水素利用を見据えて、液化水素事業に向けた調査をスタート。第一次オイルショック後の1974年からは、国の「サンシャイン計画」の研究委託を受け、本格的なエネルギー事業としての可能性の検討を開始しました。サンシャイン計画の一環として、1976年には日本初となる「液化水素の放出・拡散、燃焼実験」や、水素の炎を可視化する実験などを成功させました。
1978年に、日本初となる大型商用液化水素製造プラントを大阪水素工業(株)尼崎工場で稼働開始し、ロケット燃料として宇宙開発事業団(現 JAXA)への液化水素の供給を開始しました。水素のパイオニア企業としての大きな一歩となりました。

1978

「H-Iロケット」の燃料として
液化水素を供給

1986年8月13日午前5時45分、日本初の液化水素エンジン搭載「H-Iロケット」試験機(1号機)が種子島宇宙センターからの打ち上げに成功しました。H-IのHは水素(Hydrogen)を意味し、2段目に搭載されたエンジンの燃料には、当社が陸路・海路で運んだ液化水素が使用されました。ロケット燃料として液化水素が使用されたのは、水素の「軽くて推進力がある」という特性によるものであり、H-Iロケット以降のロケット燃料にも液化水素は採用され、日本のロケット産業には欠かせないものとなりました。

©JAXA

1986

世界最大級の
液化水素製造プラントが稼働

「イワタニ水素エネルギーフォーラム」を開催

1978年に兵庫県尼崎市に建設した液化水素製造プラントの約8倍の製造能力を誇る、世界最大級の液化水素製造プラント「ハイドロエッジ」(大阪府堺市)が稼働を開始しました。「ハイドロエッジ」では、LNGの冷熱を利用し、空気から窒素・酸素などのエアセパレートガスを製造、さらにそこで生産された液化窒素の冷熱を利用し、原料である天然ガスから取り出した水素を液化しています。このような2つのプロセスを組み合わせて効率的に液化水素を製造するプラントは世界的にも珍しく、水素ガスでの供給が大半を占めていた水素市場において大きな転換点となりました。
また、水素エネルギー社会の早期実現へ向け、「第1回 イワタニ水素エネルギーフォーラム」を開催。本フォーラムは現在でも継続的に開催しており、水素エネルギー普及の機運を盛り上げ、ネットワークを広げる場として多くの方に参加いただいています。

2006

「日本縦断 燃料電池自動車・
水素エンジン自動車キャラバン」

を実施

環境問題やクリーンエネルギーについて考え、水素エネルギーの魅力を体感いただくことを目的に、「日本縦断 燃料電池自動車・水素エンジン自動車キャラバン」を実施。
9月20日に種子島宇宙センターを出発したキャラバン隊は、子どもたちを対象にした水素サイエンス教室や、燃料電池自動車(FCV)・水素エンジン自動車の試乗会を開催しながら33日間をかけて10月22日に目的地の北海道稚内市に到着しました。総走行距離は5,930kmに及び、水素サイエンス教室を34回、試乗会を42回開催し、延べ約9,000人に参加いただきました。

2007

「中央研究所」を開所

極低温・超高圧での水素の研究設備を設置

最先端の研究・分析設備を導入した「中央研究所」を兵庫県尼崎市に開所。水素の研究においては、国内唯一の極低温・超高圧両方の水素研究が可能な設備を設置し、さまざまな研究開発や、実用化に向けた技術検証を行っています。

2013

日本初の商用水素ステーション
をオープン

7月14日、国内初の商用水素ステーション「イワタニ水素ステーション 尼崎」をオープンし、水素エネルギー社会の実現に向け歴史的な一歩を踏み出しました。
当社では全国で水素ステーションの整備を進めており、現在53カ所の水素ステーションを運営しています(2022年3月現在)。2023年度までに新たに30カ所建設する計画にしており、完成すると83カ所になります。
また、2019年4月には米国カリフォルニア州で水素ステーション4カ所の運営を開始。日本以上にFCVの普及が進み、ステーションのセルフ運営が行われている米国でのノウハウを国内での建設・運営に生かしています。

2014

Hydrogen Council
(水素協議会)
に参画

世界的な水素利用の推奨策や効果的な実行計画を策定し、共同目標の達成を目的とするHydrogen Councilに参画。同協議会は世界のエネルギー・運輸・製造業のリーディングカンパニーで構成されており、ドイツ・ボンで開催された2回目のCEOミーティングにおいて、低炭素エネルギーへの転換に向けて水素が果たすべき役割や、水素の市場潜在力などについて言及した世界規模の水素ビジョンを発表しました。現在までに6回のCEOミーティングが開催され、世界規模での取り組みが加速しています。

2017

「福島水素エネルギー
研究フィールド(FH2R)」
が完成

再生可能エネルギーを利用した水素の製造技術確立を目指し、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)や東芝エネルギーシステムズ(株)、東北電力(株)とともに「福島水素エネルギー研究フィールド」を建設。再生可能エネルギーの利用では世界最大級となる10MWの水素製造設備を備え、太陽光発電(20MW)を利用して水を電気分解し、1,200Nm3/hの水素を製造することが可能です。製造された水素は、福島県内の複数の施設で利用されているほか、東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火の燃料としても使用されました。

2020

「水素バリューチェーン推進
協議会」
を設立

水素社会の実現に向けて、さまざまな技術や知見を持つ企業、団体、自治体などが一丸となって課題解決のための議論を行う組織として「水素バリューチェーン推進協議会」を設立。当社とトヨタ自動車(株)、(株)三井住友フィナンシャルグループの会長3名が共同代表を務め、社会実装プロジェクトの創設や、需要創出、規制緩和への政策提言などを行っています。設立当初88会員でスタートした協議会は、現在では274を超える会員が参画しており、オールジャパンでの取り組みが加速しています。(2022年3月現在)

2020

「岩谷水素技術研究所」を設立

水素エネルギー社会の実現に向けて、国内外で水素の利活用に向けた技術開発や事業化検証が行われています。
岩谷水素技術研究所は、水素適合性材料の評価、機器の耐久性評価などを通じ水素ステーションの建設コストの低減や保安強化、規制見直しにつながる研究を行っています。また、再生可能エネルギーを利用したグリーン水素製造技術の開発、バイオガス技術、水素と二酸化炭素から炭化水素を合成する研究にも本格的に着手し、水素エネルギーにとらわれず、脱炭素社会の実現に向けた幅広い燃料製造技術の開発に取り組んでいます。

2021

日豪間における褐炭由来水素の
海上輸送実証試験
が完遂

2016年、当社、川崎重工業(株)、シェルジャパン(株)、電源開発(株)の4社で、技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構「HySTRA(ハイストラ)」を設立。
輸送が難しいことなどから未利用エネルギーとなっている褐炭(低品位の石炭)を有効活用してCO2フリー水素を製造し、輸送・貯蔵、利用する仕組みの構築に向けて、技術実証と商用化へ向けた課題抽出を目指し、日豪間の国際的なサプライチェーン実証プロジェクトを実施してきました。2021年12月に神戸港を出港した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」は豪州にて褐炭由来水素を積載し、2022年2月に日本に帰港。日豪間における褐炭由来水素の海上輸送実証試験が完遂しました。

2022