プロパンガスの歴史

日本で初めて
家庭用プロパンガスの全国販売を
開始
~マルヰプロパンと命名~

プロパンガスとの出会いは、1952年に富山県で開かれた高圧ガス業界の総会で、「イタリアではプロパンガスをボンベに詰めて家庭用の燃料として使用している」という講演を創業者 岩谷直治が聞いたことがきっかけでした。当時日本では、国内油田で採掘精製されたプロパンガスが自動車燃料用として利用されている程度でした。家庭の炊事は、かまどに薪をくべて火をおこすのでススや煙が発生し、主婦にとって大変重労働な家事でした。家庭にプロパンガスが普及すれば、主婦をかまどのススから解放できると考えた岩谷直治は、1953年に日本で初めて家庭用プロパンガスの全国規模での販売を開始しました。ブランドは「マルヰプロパン」と名付けました。

1953

マルヰプロパンガス普及へ

有馬温泉など、調理に大量の燃料を消費する温泉街での販売や島根県でのテストマーケティングの成功を経て、1955年、「なにわ号」「やくも号」と名付けられた2台の宣伝カーを中心としたキャラバン隊を結成。全国へのプロパンガスの普及を本格的に開始しました。車体に「マルヰプロパンガス」と書き、チラシと風船を用意して全国を走り回りプロパンガスを宣伝しましたが、パン売りと勘違いした子どもたちから「パンちょうだい」と声をかけられることもありました。神社の境内や空き地に人を集めプロパンガスを使って湯を沸かすデモンストレーションなど、地道な普及活動を繰り返すことで徐々に認知度が上がっていき、特約店も増えて、その協力も得たことで全国に普及拡大していきました。

1955

共存共栄を目指し
「マルヰプロパン会」を組織

1955年5月、特約店54店の中から店主数十人による第1回マルヰプロパン特約店会議が開催され、翌年の第2回会議には120人の店主が参集しました。イワタニと特約店が共存共栄を目指す販売店組織は、1957年「マルヰプロパン会」として新たに発足。1970年には、「マルヰ会」と名称を変え、いまや全国1,400社で構成されています。「マルヰ会」加盟各社はプロパンガス事業を基盤にして、災害時にはいち早く被災地の復旧活動に取り組んだり、地域の安全を見守る「あなたの街のサポート隊」活動を展開するなど、エネルギー生活総合サービス事業者として地域に貢献しています。

東京オリンピックにマルヰプロパン

一般家庭にもプロパンガスが普及し、日常生活に溶け込むようになった1964年、東京でオリンピックが開催されました。10月10日、開会式の聖火台の燃料にマルヰプロパンが使われ、さらには、皇居前での前夜祭に使う集火台の製作も担い、前夜祭でもマルヰプロパンが燃料に使用されました。プロパンガスが社会的に認知される象徴的な出来事となりました。

1964

新型プロパンガス専用タンク貨車を導入
大量輸送体制強化による
コストダウン

1960年代、プロパンガスの普及に伴い販売量が増え、ガス充填基地への大量輸送と運送費のコストダウンが課題になってきました。当時のプロパンガス専用タンク貨車は、タンク内に保冷材を被覆していたために最大積載量は20tでした。当社関係会社のセントラル石油瓦斯(株)の働き掛けで日本LPガスプラント協会輸送委員会が中心となって、欧米のタンク貨車を参考に保冷材を使わない新型タンク貨車の研究開発・実験が重ねられました。保冷材の被覆をなくしたことで直径が大きくなり、積載量25tの新型プロパンガス専用タンク車の製造が1966年から始まりました。長距離は専用タンク貨車、近距離はタンクローリー車、そして海路はコースタルタンカーでの大量供給体制が整い、輸送の合理化とコスト削減を果たすことができました。

1966

消費者事故減少に向け、
ガス警報器「みはり」を販売

1960年代、プロパンガスが普及するにつれて、家庭でのガス事故が増加してきました。何よりも安全性の確保が重要であると考え、1969年、日本で初となる半導体式ガスセンサーを使った家庭用ガス警報器を開発しました。「家庭の安全の見張り番」との意味を込め「みはり」と名付けたガス警報器は、発売から約20年後には累計販売1,000万台を超えました。ガス警報器「みはり」の設置など官民一体となった保安活動への取り組みが奏功し、LPガス事故発生件数のピークは1979年の793件でしたが、1997年には68件にまで減少しました。

ガス警報器「みはり」
について詳しくはこちら

1969

LPガスの一貫供給体制を構築
~堺LPGターミナル竣工~

1980年8月、大阪府堺市に当社初の輸入基地となる堺LPGターミナルを開設しました。これは、発売時からの構想であった川上から川下までの一貫供給体制を構築するための大きな一歩でした。当時、産出国からプロパンガスを直接輸入するためには、輸入基地と専用タンカーを所有し、安定した輸入源を確保する必要がありました。堺LPGターミナルの完成を見据えて、その3カ月前の5月には、サウジアラビアの国営石油会社ペトロミンとの輸入契約を交わし、堺LPGターミナルの完成によってプロパンガスの輸入権を確保することができ、名実ともにLPガスのトップサプライヤーとしての地位を確立しました。

1980

LPガスの用途拡大
~GHP・コージェネレーションの普及~

LPガスの需要増大につながる大型商品として、1987年にGHP(ガスヒートポンプ)、1988年にコージェネレーションの本格的な販売を開始しました。GHPは、ヒートポンプの動力を電気からガスに置き換えたものであり、暖房能力が高く、さらには夏場の電力のピークカットができる空調機です。1995年には当社の累計販売台数が1万台を超えるなど、長年にわたりLPガスの特色を生かした商品として、工場やホテル、病院など、さまざまな施設でご利用されています。
コージェネレーションは、ガスタービンやガスエンジンによって発電し、あわせて排ガスを利用した熱供給を行うエネルギーシステムです。当初は業務用や産業用が中心でしたが、後に家庭用の商品もラインアップされるなど拡がりを見せています。また、現在では、BCP対策として発電機を自社設置するお客さまも増えてきており、改めて個別に発電を行うコージェネレーションが再評価されています。

GHP
について詳しくはこちら

コージェネレーション
について詳しくはこちら

1987

ガストラブルを24時間監視する
「テレセーフシステム」の開発

1987年10月、ガス漏れやトラブルを24時間監視するシステム「テレセーフ」を開発しました。当時、ガス漏れによる事故が発生しており、お客さまに安全にガスをご利用いただくことが、ガスを供給するうえで課題となっていました。「テレセーフ」は、お客さま宅のLPガスメーターに情報端末を設置し、当社のコンピュータ管理システムと電話回線で結び、家庭でのガス漏れや燃焼器具の長時間使用などを監視して、必要に応じて電話や緊急出動などを行うガスの見守りシステムです。ガス警報器「みはり」とともに「テレセーフ」は、家庭での事故を未然に防ぐ、何よりも安全性の確保を重要視するイワタニを象徴したサービスといえます。

災害時のLPガス早期復旧
災害救援隊~

1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の際、被災地周辺の当社LPガス販売店組織「マルヰ会」の会員がいち早く被災地の支援に駆けつけ、LPガスの復旧作業を行いました。これをきっかけとして、全国にLPガス供給ネットワークを有する強みを生かし、災害時にLPガスの復旧作業を行う互助組織「MaruiGas災害救援隊」を発足しました。MaruiGas災害救援隊は、地震や台風、豪雪などの被災地に延べ30回、2,002名の隊員(2021年12月現在)が出動し、被災地でのLPガス復旧活動などを行っています。

1995

大量輸送によるコスト削減
~LPガスバルク供給システム~

1997年4月、改正液化石油ガス法の施行より、一般家庭を含む小口のお客さまに対する供給方法として、LPガスバルク供給システムが利用できるようになりました。バルク供給システムは、集合住宅や業務用などに設置されたバルク貯槽に、バルクローリーでLPガスを充填する供給方式です。従来の容器交換方式に代わり、一度に大量のLPガスを輸送することによって、配送の合理化によるコスト削減や安定供給、設置場所の削減など多くのメリットがあります。
現在ではCO2削減や省エネ意識の高まりを背景に、油燃料からLPガスへの燃料転換を行うお客さまが多く、当社はLPガスバルク供給システムのリーディングカンパニーとして、毎年多くのお客さまに新規設置しています。

1997

災害対策の強化
~LPG基幹センターの整備~

2011年3月に発生した東日本大震災では、ガス・電気・水道など多くのライフラインが寸断されました。このことを教訓として、災害時にもLPガスの供給を滞らせないために、ガスタンクや事務所の耐震補強、LPガス非常用発電機を配備した「LPG基幹センター」の整備を開始しました。現在までに全国53カ所まで整備を完了するなど、LPガスの安定供給に向けた取り組みを行っています。(2022年3月現在)

2011

新たなサービスの創出
~IoTプラットフォーム
「イワタニゲートウェイ」~

2021年7月、ガス警報器に通信機能を付加し、さまざまな「モノ」をインターネットにつなぐ当社独自のIoTプラットフォーム「イワタニゲートウェイ」によるサービスを開始しました。
各種メーターを接続し、ガスの見守りはもちろんのこと、ガスの配送効率を高めるとともに、お客さまの立場に立った新たなサービスの提供に努めています。今後、見守りサービスや健康管理など、お客さまの生活を支える新しいサービス・価値の提供を行っていきます。

イワタニゲートウェイ
について詳しくはこちら

2021

※文中にはLPガス・プロパンガスの表記がありますが、LPガス(液化石油ガス)とは、
プロパンガスやブタンガスなどが含まれます。家庭用LPガスはプロパンガスです。