イワタニの取り組み

日豪間の水素サプライチェーン構築

輸送が難しいことなどから未利用エネルギーとなっている褐炭(低品位の石炭)。海外に豊富にある褐炭を有効活用してCO2フリー水素を製造し、輸送・貯蔵、利用する仕組みの構築に向けて、技術実証と商用化へ向けた課題抽出を目指し、日豪間の国際的なサプライチェーン実証プロジェクトを実施しています。日本側では2016年に当社、川崎重工業(株)、シェルジャパン(株)、電源開発(株)の4社で技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構「HySTRA(ハイストラ)」を設立。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業により、2022年2月には豪州にて褐炭由来の液化水素を積載した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が神戸港に帰港し、日豪間を海上輸送する実証試験が完遂しました。

神戸港に帰港した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」

液化水素サプライチェーンの商用化実証

CO2フリー水素サプライチェーンの本格的な社会実装の取り組みの一環として、当社、日本水素エネルギー(株)、ENEOS(株)の3社で提案した「液化水素サプライチェーンの商用化実証事業」がNEDOのグリーンイノベーション基金事業に採択されました。
年間数万トン規模の大規模な水素の液化・輸送技術を確立し、水素製造・液化・出荷・海上輸送・受入までの一貫した国際間の液化水素サプライチェーン実証を行っています。本実証事業では、2030年に水素供給コスト、30円/Nm3(船上引き渡しコスト)を達成するため、海上輸送技術を世界に先がけて確立することを目指しています。

出典:日本水素エネルギー(株)など

日豪間での大規模なグリーン液化水素サプライチェーン構築

豪州クイーンズランド州で再生可能エネルギー由来の水素を大規模に製造・液化して日本に輸出することを目的に、当社、川崎重工業(株)、関西電力(株)、丸紅(株)と、豪州のエネルギー・インフラ企業であるStanwell Corporation Limited、APT Management Services Pty Ltd.,の6社で事業化調査を進めています。2026年頃に100t/日規模以上、2031年以降に800t/日以上の水素生産規模を想定しており、実現すると現在の日本における最大生産量の約26倍の規模となります。

アルドガ地区の水素製造拠点イメージ

福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)

NEDO事業の一環で、CO2フリー水素の製造を行う「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」に参画しています。福島県双葉郡浪江町に建設された本施設は、20MWの太陽光パネル、10MW級の水電解装置、圧縮水素の貯蔵、出荷設備が整備され、2020年3月から稼働を開始しました。この場所で製造された水素は、福島県内の複数の施設で利用されています。

福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)

風力発電による水素の利活用(ハマウィング)

環境省事業の一環で、当社、トヨタ自動車(株)、東芝エネルギーシステムズ(株)、(株)豊田自動織機、(株)トヨタエナジーソリューションズ、神奈川県、横浜市と川崎市が連携し、横浜市風力発電所(ハマウィング)敷地内で風力発電を利用して水素を製造。この水素を活用し、京浜臨海部での燃料電池フォークリフト導入と水素活用モデル構築実証を行っています。

水素・LPガス混合ガス導管供給

LPガスベースの都市ガスに水素を20%程度混合させて導管供給することを目的に、相馬ガス(株)と共同で水素の混合技術の検討、CO2削減効果の検証、既存埋設導管の水素漏洩に対する安全性の確認、家庭用ガスコンロやガス警報器などの性能確認や安全性の検証を行っています。
2023年より、NEDO事業の一環として福島県南相馬市内の集合住宅80戸を対象とした水素混合LPガス導管供給の実証事業を開始しています。

廃プラスチックからの水素製造

NEDO事業の一環として、豊田通商(株)、日揮ホールディングス(株)とともに、廃プラスチックをガス化して水素を製造するサプライチェーンの構築について検討を行っています。都市部で工場や家庭などから排出される廃プラスチックを活用することで、早期に水素を安定的かつ安価に供給することが可能となります。CO2排出量の削減が急務となっている発電所や各種モビリティ、港湾設備などにおける水素利用の促進をはじめ、水素供給による幅広い分野の脱炭素化と、資源循環の促進に貢献することを目指します。

水素燃料電池船の開発

NEDOの助成事業として関西電力(株)、東京海洋大学、(株)名村造船所とともに、水素燃料電池船とエネルギー供給システムの開発・実証を進めており、2025年に開催される、大阪・関西万博などでの商用運航を目指しています。水素燃料電池船は、従来船と違い、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない高い環境性能を有するだけではなく、臭い、騒音、振動のない優れた快適性が期待されています。未来へのショーケースとして、大阪・関西万博などで水素燃料電池船を商用運航し、世界各国からの来場者に水素エネルギーの可能性をPRするとともに、将来的な海上輸送分野でのゼロエミッション化に貢献したいと考えています。

水素燃料電池船の完成イメージ

水素燃料電池船 特設サイト

CO2フリー水素・カーボンニュートラルメタンの製造

NEDOの委託事業として、関西電力(株)と共同で、大阪府堺市の液化水素製造プラント「(株)ハイドロエッジ」を活用した「CO2フリー水素の製造に関する最適手法の検討およびモデル構築」と「メタネーションによるカーボンリサイクルの最適手法の検討およびモデル構築」を進めています。

  • 検討事項①:証書を活用したCO2フリー化
  • 検討事項②:脱炭設備によるCO2回収
  • 検討事項③:再生可能エネルギーによる水素製造
  • 検討事項④:カーボンニュートラルメタンの製造・供給
液化水素製造プラント「(株)ハイドロエッジ」

FCVへの水素充填時の大流量化検討

今後、モビリティ分野においてはFCバスやFCトラックなどの大型商用車両の普及拡大が進んでいくものと考えられています。乗用車タイプのFCVの何倍もの水素を一度に充填する大型車両の場合、水素ステーションでの充填時間をできる限り短縮することが求められます。そのため、高圧を保ったまま水素流量を増大化するための実証検討を行っています。

FCバス

水素エネルギーフォーラムの開催

水素エネルギー社会の早期実現に向け、水素エネルギー普及の気運を盛り上げ、ネットワークづくりの「場」を提供することを目的に2006年12月に東京で初開催しました。
2022年3月までに31回開催され、水素関連分野の専門家や研究者をはじめ水素エネルギーに関心のある方々が集まり、その数は延べ約1万7,000名にのぼり、情報交換や提言など民間レベルの協力や提携を促進する場となっています。

水素エネルギーハンドブック

水素の物性、用途、製造方法のほか、水素エネルギー社会の実現に向けた国内外での取り組みや、80年以上にわたる当社の水素事業の歴史などについてまとめた冊子です。

水素エネルギーハンドブック
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