イワタニレポート

低・脱炭素ソリューションの取り組み

2022/12/5

排ガス浄化装置(蓄熱燃焼式脱臭装置)の省エネ

工場から発生される排気ガスは、大気汚染防止法や悪臭防止法によって規制されており、一定の排出量を超えないように事業者に義務付けられています。大気汚染防止法では、ばい煙・揮発性有機化合物(VOC)・粉じん・有害大気汚染物質などさまざまな汚染物質が規制の対象になっています。処理方式は汚染物質や環境によって異なり、排ガス処理の方式として燃焼式や水膜式、化学吸着式などがあり、火や熱で排ガスの汚染物質を燃やす燃焼式の中でも、直接燃焼式・触媒燃焼式・蓄熱燃焼式などのさまざまな方法があります。燃焼方式はそれぞれに特徴やメリット、デメリットがあり、直接燃焼式は温度が高いので、高効率で安定した処理ができるものの、燃料コストが高額でCO2排出量が多いのがデメリット。触媒燃焼式は、燃焼温度が低いため、直燃比で燃料コストを低減し窒素酸化物の発生も少なくできますが、触媒毒がないなどの使用条件があり、またメンテンス費用が割高となります。蓄熱燃焼式は、燃焼時に発生した熱を蓄熱材に蓄えて熱効率を高めているため、ランニングコストが大幅に低減できるものの、イニシャルコストが割高という特徴があります。

蓄熱燃焼式脱臭装置

今回ご紹介する蓄熱燃焼式脱臭装置は、セラミックのハニカム蓄熱体による高い熱回収効率により、省エネルギーと脱臭効率を兼ね備えた装置で、他燃焼方式と比較して燃料消費量が少なく、CO2削減にも貢献します。当社では、お客さまの排ガスの性状や必要風量に合わせて、分解効率やメンテナンス性に優れた最適なシステムのご提案が可能です。また、提携メーカーとともに、粘着性のあるタール分(ヤニ)を含む排ガスにも多数の実績やノウハウを有しており、提携メーカーの蓄熱燃焼式脱臭装置ではベイクアウトシステムを採用しています。ベイクアウトシステムは、排ガス中の成分にタール分が多く含まれる場合に、蓄熱体を300~400℃まで加熱することにより、蓄熱体に付着したタール分を燃焼除去するシステムです。ベイクアウト後の排ガスに含まれる紫煙などは、再度燃焼室内で無害化されたのち排気されます。そのため、付着し易いタール分が多く含まれるため、蓄熱燃焼式脱臭装置の導入が難しいというお客さまにも採用いただいています。他にも、水膜式・化学吸着式など各種排ガス浄化装置を取り扱っており、お客さまに最適な排ガス処理装置、システムの提案が可能です。

ベイクアウトシステムの構造

蓄熱燃焼式脱臭装置の特長

  • ・セラミックのハニカム蓄熱体による高い熱回収効率により、省エネルギーと脱臭効率を兼ね備えている
  • ・他燃焼方式と比較して燃料消費量が少なく、大幅なCO2削減が可能

当社の強み

  • ・蓄熱燃焼式、水膜式、化学吸着式など各種排ガス浄化装置を取り扱っており、お客さまに最適な排ガス処理装置、システムの提案が可能
  • ・提携メーカーとともに、粘着性のあるタール分(ヤニ)を含む排ガスにも多数の実績やノウハウを有しており、タール分を多く含む場合でも最適な脱臭装置の提案が可能

事例紹介:前田道路株式会社様

前田道路様は、道路工事の拠点となる営業所を約110カ所、アスファルト合材の製造・販売をする合材工場約100カ所を全国各地に有しており、「道路建設や生活に直結した身近な工事」と「アスファルト合材の供給」で、道路をはじめとしたさまざまな地域インフラの発展に貢献されています。今回、アスファルト合材工場の排ガスの臭気対策として、直接燃焼式から蓄熱燃焼式脱臭装置に更新をしていただいた事例をご紹介させていただきます。

川崎合材工場

きっかけは、アスファルト合材工場の市街化が進んだことによる環境対策とそれに伴う燃料コストの増加

前田道路様では、近年、アスファルト合材工場の市街化が進んできており、合材工場で発生する臭気の対策に取り組んでいました。合材工場の臭気は、主に製品製造工程でリサイクル骨材の加熱乾燥時に発生します。その対策として、リサイクル骨材の加熱乾燥炉とは別に排ガスの直接燃焼式脱臭炉を設置していましたが、臭気対策が解決する反面、直接燃焼式脱臭炉により多くの燃料を使用する必要がありました。2018年、燃料コストの削減と環境対策を目的に、直接燃焼式以外の方式による排ガス処理の検討を本格的に実施。約1年間さまざまなメーカーにヒアリングしたものの、排ガス中にタール分が含まれているため、導入に前向きなメーカーがなかなか現れませんでした。その中で当社にもお声がけをしていただき、提案がスタートしました。

採用のポイントは、タール分の除去に対するハードルを一緒に乗り越えていったこと

排ガス中にタール分が含まれていると蓄熱体のハニカム状のセラミックにタールが詰まってしまうので、その除去が必要となります。当社はタール分の除去をする方法として、蓄熱体を300~400℃まで加熱し、蓄熱体に付着したタール分を燃焼除去するベイクアウトシステムを採用している蓄熱燃焼式脱臭装置を提案しました。また、当社が前田道路様とタール分の除去に対するハードルを一緒に考えて講じていったことを評価いただき、2019年に前田道路様の川崎合材工場で蓄熱燃焼式脱臭装置を導入いただきました。川崎合材工場様でトラブルなく運用できたこと、脱臭炉の燃料使用量を約80%削減できたことが評価され、他の合材工場への導入も拡大していただいています。前田道路様では、今後も蓄熱燃焼式脱臭装置の導入を進めていくとともに、CO2フリー燃料への移行も視野に入れながら、より環境に配慮したアスファルト合材工場にすることで地域事業に貢献していく考えです。

川崎合材工場の蓄熱燃焼式脱臭装置

前田道路株式会社様のご紹介

本社:東京都品川区大崎1丁目11番3号
前田道路様は社会資本の整備と地域社会の豊かな生活に貢献するため、90年以上にわたり道づくりを続けられてきました。人や車の往来の安全を守る。地域に根づいた文化や景観に寄り添う。そして地球環境への負荷を軽減する。前田道路様は事業活動を通して、人がいきる環境の維持・改善に徹底して取り組んでいます。前田道路様の事業や取り組みの詳細につきましては、ホームページ(https://ssl.maedaroad.co.jp/)をご参照ください。

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