イワタニレポート

低・脱炭素ソリューションの取り組み

2022/11/14

再生フロンの取り組み

2016年10月に、ルワンダの首都キガリで開催された「モントリオール議定書」締約国の会合において、代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン)が新たに議定書の規制対象となる改正が採択されました(キガリ改正)。それにより、国全体のHFCの生産量および消費量(生産量+輸入量-輸出量)を一定の水準以下に抑えることが必要となり、日本は2019年から段階的な削減、2029年以降では基準値比(2011~2013年の実績平均)で約70%以上の大幅な削減が求められています。そのため、空調、冷蔵庫、スプレー缶、洗浄剤などのメーカーでは、新品フロンの削減など新たな対応に迫られています。

再生フロン

その中で大きな注目を受けているのが「再生フロン」です。
「再生フロン」とは、一度使用したフロンを回収し、精製・処理することでフロンを再生させ、再度使える状態にしたフロンのことを指します。フロン回収破壊法が施行されてから、国内ではフロンガスを回収し、破壊して廃棄するというのが一般的でした。しかし、キガリ改正を契機に、資源を再利用し環境負荷を減らす観点や安定供給の観点から、再生フロンのニーズが高まってきました。
「再生フロン」は、ライフサイクル全てにおける環境負荷を総合したLCA手法で比較すると、フロンの「再生処理」は「破壊と新規製造時の合計」と比較して、CO2排出量が1/12(R22の場合)といわれているなど、低炭素化にも貢献する特長があります。

そのような中、当社では再生フロンの取り組みを強化しており、新品フロンと比較して品質面で劣ることがない高品質な再生フロンの提供を行っています。また、高品質な再生フロンの提供だけではなく、高純度炭酸「エコフリーズ」(当社オリジナルブランド)やアンモニアなどの環境にやさしい自然冷媒も提供しており、お客さまのニーズに合わせた最適な商品の提案や、ガスのハンドリング技術を生かした最適な供給方法の提案を行っています。

再生フロンの特長

  • ・LCA手法の比較では、「破壊と新規製造時の合計」と比較してCO₂排出量が1/12(R22)になる
  • ・再生フロンを活用することで、供給ソース多角化による安定供給の実現が可能

当社の強み

  • ・高品質な再生フロンの提供が可能
  • ・高純度炭酸「エコフリーズ」やアンモニアなどの自然冷媒の提供も可能
  • ・ガスのハンドリング技術や配送網を生かした最適な供給方法の提案が可能

事例紹介:株式会社アイシン様

自動車部品のグローバルサプライヤーであるアイシン様は、家庭用コージェネレーションやガスヒートポンプエアコン(GHP)などエネルギー・住生活関連製品も手掛けられています。今回は、アイシン様のGHPの冷媒として、再生フロンを採用いただいた事例をご紹介させていただきます。

アイシン製GHP

きっかけは、キガリ改正による新品フロンの安定調達が難しくなってきたこと

アイシン様ではGHPの冷媒として新品フロンのR410Aを使用していましたが、キガリ改正により新品フロンの調達が年々厳しくなってきました。そのため、安定調達やSDGsの観点から2019年より再生フロンの導入に向けた本格的な検討が開始されました。しかし、さまざまな再生フロンの検討をしたものの、品質が新品フロンより大きく劣るものが多いことなど、なかなか採用するには至りませんでした。その中で当社にもお声がけをしていただき、当社が取り扱っている再生フロンの紹介をさせていただいたことが提案のきっかけとなりました。

採用のポイントは、品質と既存設備の有効活用

アイシン様が再生フロンを採用する上で大きな課題としていたことは「品質」と「現場での手間を増やさないこと」の2点がありました。当社の取り扱っている再生フロンは、新品フロンと比較して品質面で劣ることがないのが大きな特長で、新品フロンと並行して使用することもできます。アイシン様で品質テストを実施し、新品フロンと遜色なしという評価を得て、「品質」の問題はクリアすることができました。
また、当社は長年のガスの取り扱い経験により、お客さまの要望に沿った柔軟な供給方法の提案が可能であることに加え、アイシン様から「イワタニはすぐに現場に来てくれて、一緒に課題をクリアしてくれたことが大きかった」と当社の迅速な対応が採用のポイントの一つとなりました。今回は、新品フロンの一部を再生フロンにすることもあり、もともとの設備やオペレーションを変更することなく供給する提案を実施し、既存設備の有効活用や「現場での手間を増やさないこと」という課題に対してもクリアすることができました。そのような提案をご評価いただき、2022年4月より当社から再生フロンの供給を開始させていただきました。

今後は再生フロンを中心に自然冷媒の検討も進める

アイシン様では、新品フロンの一部を再生フロンに切り替えることで、フロンの安定調達を実現することができました。また、今後、新品フロンの調達がより難しくなってくることから、再生フロンの割合を増やしていくことや、環境負荷の低いグリーン冷媒の検討・それに適合する機種の開発も進めていくことを検討されていき、環境負荷低減に向けた取り組みを強化していく考えです。

株式会社アイシン様のGHPの紹介

住所:愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地
(株)アイシンのGHPは、安城工場で製造されています。アイシン製GHPの特長は、「高効率でコンパクトなところ」と「軽量で設置面積も少なく済むので、スペースに制限があったり耐荷重が気になる現場での設置に最適なところ」です。また、電源自立型空調「GHPハイパワープラス」は、災害に強い燃料であるLPガスとの相性がバツグンで、停電時でも空調利用や電源確保が可能になります。夏場の電気のピークカット、BCPや災害対策の強化を検討している場合は、GHP導入の検討をおすすめします。アイシン製GHPの詳細は、アイシン様のホームページ(https://www.aisin.com/jp/product/energy/ghp/)をご参照ください。

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