イワタニレポート

水素エネルギー社会の実現に向けた取り組み

2022/4/27

世界初、褐炭から製造した水素を液化水素運搬船で
海上輸送・荷役する実証試験の完遂式典を開催

イワタニレポート2021年10月号では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」において、当社を含む3社が提案した「液化水素サプライチェーンの商用化実証」が採択されたことを紹介しました。
この商用化実証に先立ち、当社が参画しHySTRA(2016年設立)として取り組んでいたNEDOの助成事業「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」(以下、「本事業」)において、世界で初めて褐炭から製造した水素を液化水素運搬船で日豪間の海上輸送を行い、受入基地のある神戸で揚荷役するまでの実証試験を完遂しました。
今月号のイワタニレポートでは、実証試験の取り組みについて紹介します。

日豪間の実証航海を終えて2022年2月に神戸港に帰港した液化水素運搬船

記念式典には岸田文雄首相も出席

2022年4月9日に開催された記念式典には、岸田首相ら約50名が出席しました。岸田首相は祝辞の中で、「エネルギーの安定調達と脱炭素化を実現するには水素社会の構築が大きなカギになる」と述べ、水素エネルギーの後押しを示唆しました。

水素サプライチェーン構築実証試験の完遂イベントでの記念写真

参加企業各社が担当分野別に共同実証を推進

組合員企業7社のうち、2016年のHySTRA設立当初は4社(当社、川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)、シェルジャパン株式会社(以下、シェルジャパン)、電源開発株式会社(以下、Jパワー))でスタートし、後に3社(丸紅株式会社(以下、丸紅)、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)、川崎汽船株式会社(以下、川崎汽船))が合流して共同実証を進めてきました。

7社の役割

岩谷産業 液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch神戸」の運営および船/基地間の液化水素荷役実証の遂行
川崎重工 液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」および液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch神戸」の開発/建造
シェルジャパン STASCO(Shell International Trading and Shipping Company Limited)による液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の運航
Jパワー ラトローブバレー産褐炭からの水素ガス製造設備を建設/運用
丸紅 総合商社としてのノウハウを活用したCO2フリー水素サプライチェーン技術の社会実装に向けた検討
ENEOS CO2フリー水素サプライチェーンの事業性検討
川崎汽船 LNG運搬船の運航で培った知識と経験を活用し、液化水素の安全な運搬を支援

本事業の全体イメージ

  • ※日豪サプライチェーン実証試験のうち、赤字はHySTRAがNEDOより支援を受け実施。
  • ※日豪サプライチェーン実証試験のうち、白字は豪州コンソーシアムが連邦政府およびビクトリア州政府より支援を受け実施。

当社の実証担当分野における成果と今後のテーマ

組合員企業7社はそれぞれ異なる担当分野において実証試験に取り組んできました。当社においては、神戸空港島に建設された液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch神戸」の運営および船/基地間の液化水素荷役実証の遂行が担当分野となります。

  • ●今回の実証試験を通じて得たこと
  • 1. 液化水素運搬船と基地間の荷役手順を確立
  • 2. 大型貯槽のウォームアップおよびクールダウン手順の確立
  • 3. 大流量下での液化水素荷役手順の確立
  • 4. 配管の大口径化による冷却方法の違いの明確化
実証試験の様子
  • ●当社担当分野における今後の検討テーマ
  • 1. より設置面積が小さく操作性に優れる鋼管型ローディングアームシステムを採用した試験
  • 2. オープンラック型蒸発器の設置による操作性および健全性の確認
ローディングアームシステムの検討

今回のサプライチェーン構築実証の完遂により、国際的な液化水素サプライチェーン構築が可能であることが立証され、水素をエネルギーとして当たり前に使える社会の実現に、さらに一歩前進しました。今後、さらなる設備の運用を通じて、将来の商用水素サプライチェーン構築に資するデータや知見を積み重ねていくとともに、本事業を契機として、我が国が次世代のクリーンな水素エネルギー社会構築に貢献できるよう、引き続き関係者と協力して取り組んでいきます。

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