イワタニレポート

水素エネルギー社会の実現に向けた取り組み

2021/12/22

水素エネルギー社会に向けた新たな実証事業が2件スタート
「岩谷水素技術研究所」を設立

岩谷産業は、国際的な水素サプライチェーン構築に向けた様々な取り組みに参画しており、豪州の褐炭(低品位の石炭)から水素を製造し、発生した二酸化炭素を地中に貯留してブルー水素を製造・輸送するプロジェクトや、グリーンイノベーション基金を活用して商用レベルのサプライチェーンを構築する「液化水素サプライチェーンの商用化実証」など、2030年に水素を大量調達することを目指した具体的な取り組みを進めています。
また、国内で低炭素な水素を製造して地産地消したり、LPガスに水素を混合して低炭素化を目指すなど、国内で水素を調達し、低炭素社会を実現するための実証実験にも積極的に取り組んでいます。

豪州の褐炭炭田

水素・LPガス混合導管供給の検討を開始

当社と相馬ガスホールディングス(株)はNEDOの委託事業として、「水素混合LPガスの供給利用に関する調査」を提案し、採択されました。
本事業は、相馬ガス(株)が供給しているLPガスベースの都市ガスに水素を20%程度混合させて導管供給することを目的に、水素の混合技術の検討、CO2削減効果の検証、既存埋設導管の水素漏洩に対する安全性の確認、家庭用ガスコンロやガス警報器などの性能確認や安全性の検証を行うものです。検討期間は2023年2月までを予定しており、検討結果を踏まえ、将来的には福島県南相馬市のお客様 約500戸を対象とした実証試験を想定しています。混合する水素は、福島県浪江町で太陽光発電の電力を使ってグリーン水素の製造実証を行っている「福島水素エネルギー研究フィールド」の水素を活用する計画です。
今回の実証試験は、当社がこれまでに行ってきた北九州水素タウンなどでの水素導管供給とは異なり、一般住宅を対象とした民生向けに導管で水素を供給し、燃料電池による発電ではなく、燃焼させて燃料として使用すること、また、既存の供給インフラ、燃焼機器を使用するという点で国内初の取り組みとなります。

グリーン水素の製造を行っている
「福島水素エネルギー研究フィールド」

廃プラのガス化により水素を製造するサプライチェーン構築を検討

当社および、豊田通商(株)、日揮ホールディングス(株)は、NEDOの委託事業として、「都市部における廃プラスチックガス化リサイクルによる地域低炭素水素モデル構築に向けた調査」を提案し、採択されました。
本調査では、廃プラスチックをガス化して水素を製造するサプライチェーンの構築について検討を行います。プラスチックリサイクルに関しては、2021年6月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(新法)が成立するなど社会的関心が高まっています。本調査で採用する、プラスチックを分子レベルに分解するガス化ケミカルリサイクルは、マテリアルリサイクル※1やモノマー化ケミカルリサイクル※2の適用が難しいとされる、異種素材や不純物が混合したプラスチックでも処理可能である特性を有しており、リサイクル率向上への貢献が期待されています。
これにより、都市部で工場や家庭などから排出される廃プラスチックを活用することで、早期に水素を安定的かつ安価に供給することが可能となります。

  • ※1 廃プラスチックの分子構造を保ったまま溶融、成形などの加工を行い、再利用する方式
  • ※2 廃プラスチックを単体の分子化合物であるモノマーに分解し、不純物との分離および精製の後、再度モノマーを重合してプラスチック製品などに活用する方法

サプライチェーンのモデルイメージ

「岩谷水素技術研究所」を設立

兵庫県尼崎市の中央研究所で開発を進めている水素技術をさらに発展させるため、10月1日、中央研究所内に新たに「岩谷水素技術研究所」を設立しました。
新設した研究所では、水素エネルギー社会に向けて、これまでに蓄積、取り組んできた技術開発に加え、グリーン水素など新たな独自の水素技術開発を加速・推進いたします。
具体的は、国内でもトップレベルの液化水素試験設備や超高圧水素ガス試験設備を活用して、水素適合性材料の評価、機器の耐久性評価などを通じ水素ステーションの建設コストの低減や保安強化、規制見直しに繋がる研究を加速します。また、今後の水素大量供給時代を見据えた機器開発や新技術開発にも注力いたします。
また、再生可能エネルギーを利用したグリーン水素製造技術の開発や、水素と二酸化炭素から炭化水素を合成する研究などにも本格的に着手し、水素エネルギーにとらわれずに今後必要となる幅広い当社独自の脱炭素に向けた燃料製造技術の研究を推進いたします。

水素技術研究所の研究設備

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