イワタニレポート

水素エネルギー社会の実現に向けた取り組み

2021/9/27

CO2フリー水素社会に向けた取り組み①

岩谷産業は外販用の水素販売で国内70%のシェアを保有しており、なかでも液化水素に関しては国内唯一のサプライヤーとして100%のシェアを誇っています。現在、大阪府堺市、千葉県市原市、山口県周南市の3カ所で液化水素の製造プラントを稼働しており、年間の水素製造能力は1億2,000万㎥にのぼります。一方で、現在国内で商業用に製造・供給されている水素は製造時および輸送時にCO2を排出しており、CO2フリー水素社会の実現には、CO2を排出しない製造方法の確立が不可欠です。今月および来月のイワタニレポートでは、CO2フリー水素社会の実現に向けた取り組みについて紹介いたします。

液化水素製造プラント「ハイドロエッジ」

液化水素製造プラント「ハイドロエッジ」を活用したCO2フリー水素製造の取り組み

当社は、関西電力株式会社と共同で、大阪府堺市の液化水素製造プラント「ハイドロエッジ」を活用したCO2フリー水素の製造およびカーボンニュートラルメタンの製造に向け、NEDOの委託事業「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に応募し、採択されました。
今後、関西電力株式会社と共同で、本案件を4つの検討事項に分けて調査を行い、最適な方法の検討とモデル構築を目指します。

実施期間

2021年度(1年間)

実施体制

代表委託先 関西電力株式会社
委託先 岩谷産業株式会社

主な役割

関西電力 カーボンニュートラルメタン製造供給検討
カーボンニュートラルメタンの需要量調査
事業性評価(取りまとめ)他
岩谷産業 CO2フリー水素製造供給検討
CO2フリー水素の需要量調査
事業性評価他

各検討事項の取り組み内容

CO2フリー水素の製造に関する最適手法の検討およびモデル構築

  • ●検討事項1:証書を活用したCO2フリー化
    <実施内容>
    水素製造の原材料である天然ガスのCO2フリー化を目指し、証書の調達方法やコスト等を調査することで最適な活用モデルを検討する。
  • ●検討事項2:脱炭設備によるCO2回収
    <実施内容>
    脱炭装置等の導入や運転に要するコストの調査等によって、CO2回収の最適なモデルを検討する。
  • ●検討事項3:再生可能エネルギーによる水素製造
    <実施内容>
    再生可能エネルギー由来の電力の調達方法や水電解装置等の設備構成やコストの調査を行い、最適な製造モデルを検討する。
    メタネーションによるカーボンリサイクルの最適手法の検討およびモデル構築
  • ●検討事項4:カーボンニュートラルメタンの製造・供給
    <実施内容>
    CO2およびCO2フリー水素を反応させカーボンニュートラルメタンを製造するメタネーションの適用可能性と、既設設備を最大限活用したカーボンニュートラルメタンの輸送方法の調査を行い、最適な製造・供給モデルを検討する。

バイオマスを原料とした発電事業およびグリーン液化水素製造事業の検討を開始

当社は、5万kWのバイオマス発電及びグリーン液化水素製造の事業化に向けた検討を開始しました。
本事業では、PKS(Palm Kernel Shell/パームヤシ殻)及び木質ペレットなどのバイオマスを原料とした5万kWのバイオマス発電設備と、これらのバイオマスから水素を製造し、-253℃まで冷却して液化する設備を併設する計画です。水素の製造・液化で要する電力は、再生可能エネルギーであるバイオマス発電から給電することで、グリーンな液化水素を製造・供給することが可能です。
当社は、2015年よりバイオマス発電所向けにPKS及び木質ペレットの輸入・販売事業を開始して以来、着実に販売数量を拡大しており、水素とバイオマスの両事業を融合することで、日本初のグリーン電力及びグリーン液化水素の供給を目指します。

PKS
(パームカーネルシェル)

水素燃料電池船と船舶用ステーションの開発を開始

水素エネルギー社会の実現には、安価で大量のCO2フリー水素を調達することに加え、水素を大量に消費するための新たな需要を創出していくことも重要です。
このため、当社では、NEDOの助成事業として関西電力株式会社、東京海洋大学、株式会社名村造船所とともに、水素燃料電池船とエネルギー供給システムの開発・実証を進めており、2025年に開催される、大阪・関西万博等での商用運航を目指しています。
水素燃料電池船は、従来船と違い、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない高い環境性能を有するだけでなく、臭い、騒音、振動のない優れた快適性が期待されています。未来へのショーケースとして、大阪・関西万博等で水素燃料電池船を商用運航し、世界各国からの来場者に水素エネルギーの可能性をPRするとともに、将来的な海上輸送分野でのゼロエミッション化に貢献したいと考えています。

水素・燃料電池船の完成イメージ

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