低環境負荷PET樹脂

毎日大量に消費されるペットボトル。その廃棄に伴う海洋ごみ問題、CO₂排出などの環境負荷低減のため、
イワタニはPET樹脂の原料である石油由来のモノエチレングリコールを
非可食のサトウキビ由来に置き換えた「バイオPET樹脂」開発と、サプライチェーンを確立。
また、ペットボトルの再資源化を促すPET樹脂として「アルミ触媒PET樹脂」の開発も注目を集めている。
事業の一翼を担った小林 広和が、プロジェクトの苦労と、今見据えている目標を語った。

小林 広和Hirokazu Kobayashi

2007年入社 マテリアル本部
機能樹脂部 東京産業資材課

開始時期・きっかけ

この開発プロジェクトは2010年、ある大手印刷メーカー様から、植物由来の原料を使って樹脂を製造できないかというご依頼を受けたことがきっかけでした。タイのPET樹脂メーカーと共同で、詰め替え用のパウチなどに使われるフィルム用途の樹脂の製造に取り組んだことから始まっています。当時供給の流れは確立しておらず、植物由来の粗原料調達先を探すところからの取り組みでした。私は2012年からプロジェクトに関わり、新しくペットボトル用途のバイオPET樹脂の販売開始に向けて、お客さまとの商談、コストダウンに向けた委託先工場や粗原料調達先との交渉などを行いました。

プロジェクトが目指すもの・ゴール

現在、PET樹脂成分の30%を植物由来原料に置き換えていますが、これを100%植物由来化することを目指しています。米国のスタートアップ企業が開発した触媒技術をもとに量産プラント建設のプロジェクトのフィジビリティスタディ(実行可能性調査)を行っており、これが実現すると、石化由来の粗原料を使わずに再生可能な植物原料のみで製造される新たな素材となります。また、リサイクル性を高めたアルミ触媒PET樹脂の開発・供給にも取り組み、SDGsの実現に、より貢献できると考えています。

苦労や挫折の経験

開始当初、バイオPETの市場は極めて小さいものでした。少量生産による生産効率の悪さで石化由来PET樹脂との価格差が大きく、なかなか市場に受け入れられなかったのです。当時は包装資材予算も多くなく、高い材料は検討できないといった声が多くありました。販売量が伸びないと生産量は伸びず、生産量が伸びなければコストが下がらず販売も伸びない、という課題を抱えていました。このブレイクスルーのために、思い切って、当時の販売実績よりも大幅に生産量を増やすことでコストを下げ、結果、増やした生産量に見合う販売数量まで伸ばすことができました。お客さまのニーズに合わせた供給体制の重要性、仕組みを構築することによる競争優位の確保、といったマーケット感覚を養うことができた経験となりました。

現在の取り組みや目標

PET樹脂をはじめ、各種プラスチック容器を大量に使用する、飲料、食品、化粧品、日用品といった業界では、海洋ごみ問題、CO₂排出、サスティナビリティの観点から、リサイクル、容器の軽量化、簡易包装、バイオマス原料の導入などサスティナブル素材の導入に取り組んでいます。低環境負荷PET樹脂の拡大に貢献出来た経験を活かして、お客様のニーズに合わせた原料や素材などを世界各地から調達し、新たな事業の柱を構築していきたいです。

※社員所属部署と内容は取材当時のものです。