熱い想いと市場を読む冷静さが
“バイオPET”という新たな市場を生み出した

大島 寛HIROSHI OSHIMA

マテリアル本部 機能樹脂部 東京産業資材課
1998年入社

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協働協働

メーカーと共にプラント設計にも積極的に取り組む

これまでの「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」を前提とした経済成長は、地球温暖化や廃棄物処理などの問題を招き、さらには資源争奪や資源価格の高騰といった世界規模の問題に広がっていることは周知の事実であろう。イワタニの機能樹脂部が取り扱う包装資材類は石油製品であるため、事業活動を起こせば起こすだけ廃棄物やCO2が増加すると思われがちなマーケット。包装資材を使用する側の流通やブランドもまた、そのイメージを払拭する機会を模索している状況であった。
そんな中、イワタニのパートナー企業であるタイのPET樹脂メーカーが、植物由来原料“バイオPET”の開発に成功。飲料用のペットボトルの製品化を進めることとなった。イワタニは素早くこの情報をキャッチ。具体的な製品化を模索する段階で、日本の大手印刷会社との間で“バイオPET”による包装資材ビジネスの話が持ち上がった。当時の状況を本プロジェクトのリーダーであった大島はこう語る。
「多くの日系企業が “バイオPET”に注目し、タイの樹脂メーカー、インドの原料メーカーに対し、群がるようにアプローチする中、イワタニは具体的なビジネスプランを持って交渉。それらの企業に先んじて商権を獲得することができたのです」。
無事、原料は確保したものの、その時点では従来品(石油由来原料)より原料・製造コストともに高く、拡販に繋げるのは難しいと大島は考えていた。「まずは、PET樹脂メーカーと協議しながら工程の改善を行い、その結果、開発当初より2割以上のコストダウンに繋げることができました。」しかし、拡販体制への移行には、さらなる開発コストの削減が必要であると考えていた。そして、タイミングよく転機が訪れる。この樹脂メーカーが中国で新工場を作るという話が持ち上がったのだ。「私たちも製造ライン計画から参画し、先方の技術者と一緒になって、効率のよい生産体制を整えていきました。その結果、目標としていた価格で“バイオPET”を製品化することに成功したのです」。

挑戦挑戦

「まず、やってみろ」という風土が後押し

ところが、新たな難問が発生する。低コスト実現のためには、最低でも1ロットで数百トンを生産しなくてはならず、その段階で商談が成立していた大手印刷会社の需要だけではカバーできない状況にあった。商社であるイワタニとしても、大きな在庫を抱えるリスクを背負うのは難しい。しかし大島は、ここで引き返すことはできないと判断した。
「社会的意義のある製品を世に出すという強い“想い”を持って、そして思いっきりいかないと、前に進むことはできないと思っていました」。
もちろん、大島には確信があった。サンプルを持参し、地道な営業活動を続ける段階で、環境意識の高い大手企業を中心に、多くの賛同者を得ていったのだ。また、社会的意義の高いビジネスにチャレンジする大島を後押しする、イワタニの経営陣の姿勢にも励まされたという。
「“まず、やってみろ”という精神が根付いており、エネルギーを扱うイワタニだからこそ、目先の利益だけにこだわらず、ビジネスを長期的な目線で捉えていく土壌があります」。 環境負荷低減が高まる社会情勢も追い風になった。2012年に、経済産業省主管によるLCA日本フォーラムで“バイオPET”が奨励賞を獲得。原料採取から廃棄までの全ての段階を通して、製品やサービスが及ぼす環境負荷を定量的に捉える手法が評価を受け、“バイオPET”の社会的価値が確固たるものとなった。
「この“バイオPET”を使ってフィルムを作るメーカーのみならず、その価値を享受できるであろう、川下の包装資材を使用する食品や化粧品、日用品メーカーや流通に対して啓発活動に取組みました。また、価値を理解していただいたうえで、製品や生産拠点まで提案するトータルコーディネートを行いました」。
大島は、今はまだ導入段階に過ぎないという。しかし、世界で3千万トンともいわれるPETによる包装資材市場をイワタニが塗り替えていく決意を固めている。
「既存の商材は競争にさらされ、いずれ疲弊していく。私たち商社マンは、常に新しい市場を切り拓いていけなくてはなりません。今回の“バイオPET”は、その好例であったと自負しています。この気概を後輩たちに身を持って伝えることができたのが何よりもの収穫です」。

注)LCA:Life Cycle Assessment の略。主に個別の商品の製造、輸送等の各チャネルでの環境負荷を明らかにし、改善策を検討する事。

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