ヘリウムの世界拡販という巨大なミッションに
“誠実さ”を切り札に困難な交渉に臨む

齋藤 啓成HIRONARI SAITO

産業ガス・機械事業本部 ヘリウムガス部
1997年入社

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交渉交渉

“ヘリウム危機”にも供給責任を全う

ドイツを本社とするグローバルな医療機器メーカーの日本法人とイワタニとの取引は1995から始まった。それから長年に渡り、医療用MRIに使用する液体ヘリウムの供給を続けてきた。2013年に業界を不安に陥れた、いわゆる“ヘリウム危機”の際にも、同業他社が早くも供給不能を宣言するなか、イワタニだけが同社に対して安定供給を続けたことで、固い信頼関係を構築していた。
2010年、イワタニは日本初となるカタール産ヘリウムの購入権獲得に成功。中国、東南アジアに生産基地を開設し、コンテナ運搬、小分け充填による販売体制を整備していった。従来のアメリカ依存からの脱却、そして契約上の縛りから開放され、日本国内のみならず世界各国への拡販が可能となった。そこで、グローバルにビジネスを展開する先述のドイツの医療機器メーカーに注目。世界拡販のミッションを背負う齋藤がドイツ本社との交渉をスタートさせることとなった。
「日本法人の後押しもあり、例の“ヘリウム危機”を救った功績についてはすでにドイツ本社にも伝わっていました。そのため、交渉の門戸自体はスムーズに開かれたのですが、想定以上に交渉条件のすり合わせは難航することとなりました」と齋藤は当時を振り返る。契約条項には供給保証や、それが不履行になった際のペナルティが明記。イワタニにとっては手放しで歓迎できる内容とはいえなかった。けっして悪意があるのではなく、これも “ヘリウム危機”を経験した同社の自己防衛意識の表れであろうと齋藤は理解。もちろん、喉から手が出るほどに欲しい契約ではあったが、不利な条件のまま話を進めると、イワタニの次代を担う後輩社員たちに悪影響を及ぼすことになる。最初の契約を取りまとめるものの道義的責任として、このまま簡単に首を縦に振るわけにはいかないと感じていたという。

伝承伝承

エネルギーの取引に“ゴール”などない

そこで齋藤は、自社のビジネススキームについて、誠実な姿勢で丁寧に説明。ヘリウムの運搬、充填といったイワタニの責任範囲においてのみ、100%ではなく、調達量の増減に併せて保証することを条件として盛り込むことに成功する。「もちろん、交渉段階で両社の関係性が悪くなることなどありませんでした。お互いにベストな解を求めるための共同作業であったと認識しています」。
齋藤の粘り強い交渉が実り、交渉開始から約一年後に包括契約を締結。ところが、それは単なる通過点のひとつに過ぎなかった。
「ドイツ本社と包括契約を締結した後に、順次各国の調達部門との契約を交わしていったのですが、それから一年経っても一向に供給量が伸びてはいきませんでした。私たちはドイツ本社ばかりに目を向けて商談を進めていたのですが、結局、各国それぞれに購買文化があるということに気づいていなかったのです」。
齋藤は、その問題点を察知した後に素早く動き始めた。各国の購買担当者がドイツ本社を訪問する機会を捉え、本社購買担当同席のうえで話を詰めることにした。
「日本、中国、韓国、マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの担当者とコミュニケーションを図りながら、それぞれに供給数量を決定していきました。そこまで詰めて、ようやく翌年からは順調な滑り出しを見せるようになりました」。
今回のアライアンスが、ヘリウムガス分野におけるイワタニの存在感を世界に示すことになったのは間違いない。ところが齋藤は決して、その成功に酔いしれることはない。
「こういったエネルギーの取引は、契約をしたり、納品をしたら終了というものではありません。結局、ゴールなどないと思っています。“あなたたちがいないと私たちの仕事が成り立ちません”といわれるような存在になって、はじめて達成感を得ることができるのかもしれません」。

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