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2010年06月29日(火曜日)

オゾン水で「ステンレス表面へのアパタイト粒子複合化技術」を開発
~金属表面に生体親和性材料を化学的に結合、
ステントなど医療用デバイス、歯科医療分野へも応用へ~

岩谷産業株式会社

 

岩谷産業株式会社(本社:大阪・東京、社長:牧野明次、資本金200億円)は、この度、ベンチャー企業の株式会社ソフセラ(本社:東京、社長:河邉カーロ和重、資本金66百万円)と共同で、ステンレスなどの金属表面に生体親和性材料であるハイドロキシアパタイトのナノ粒子を化学的に結合させる複合化技術を開発しました。

岩谷産業では、すでに国立循環器病センターと共同で、高分子基材上にアパタイト粒子を被覆する技術を確立しており、ハイドロキシアパタイトのナノ粒子の製造・販売を根幹の事業とする㈱ソフセラとの共同研究により、これまで難しいとされてきた金属表面への被覆技術の開発に成功しました。

ハイドロキシアパタイトは、歯や骨の主成分である生体親和性材料であり、感染症のリスクが軽減できることなどから、ステント(血管等の管腔を内部から広げる医療機器)など医療用デバイスや金属アレルギー対策などへの応用が期待されます。

 

■当技術の特長 

ハイドロキシアパタイトは、リン酸カルシウム化合物:Ca10(PO4)6(OH)2という無機物のセラミックであり、高分子基材に比べ、ステンレスなどの金属表面に化学結合させるのは極めて難しい技術です。岩谷産業とソフセラは、ステンレス表面に高濃度オゾン水を作用させると、ハイドロキシアパタイトを結合させるのに有効な官能基(水酸基)を効率よく形成できることを突き止めました。さらに、国立循環器病センターで進めてきた技術を発展させ、オゾン水プロセスだけでなく、前後のプロセスや条件の最適化を行うことにより、このたびの量産も目論める効率的な被覆技術の確立に至りました。 

オゾンを使わない方法としては、硝酸のような強酸やチオール(硫黄を末端に持つ有機化合物)のような極めて臭気の強い薬液を使う方法が研究レベルで提案されていますが、両社が確立したような均一かつ高効率に結合させることができないことや、危険な薬品を使うことに大きなデメリットがあります。

 

■期待される応用分野 

①ステントに代表される種々の医療用デバイス 

②人工関節などの整形外科分野や、インプラント治療を行う歯科医療分野への適用 

③金属アレルギーの方への反応防止(ピアス、ネックレス、時計など)

 

■プロセスの詳細

ステンレスなどの金属表面は通常自然酸化膜に覆われています(下図中の②)。この自然酸化膜は、非常に安定で、このままではハイドロキシアパタイトのナノ粒子を被覆することはできません。そこでまず、精密洗浄を行った後、強い酸化力を有する高濃度オゾン水を用い、金属表面に反応活性を有する水酸基(-OH基)を導入します(図中③)。この水酸基が最終的にハイドロキシアパタイトを複合化させる基点となります。

続いて、無機材料と有機材料を結合させるための仲介役となる化合物(シランカップリング剤)を反応させます(図中④)。そして、反応性モノマーをシランカップリング剤にグラフト重合することによってグラフトポリマーを形成させます(図中⑤)。このグラフトポリマーは、ハイドロキシアパタイト粒子と結合する手の数を増やすとともに、結合を強固にするバインダーの役割を果たします。

このようにグラフトポリマーを形成させた表面をハイドロキシアパタイト粒子分散溶液で処理し、最終的にグラフトポリマーの側鎖官能基であるアルコキシシリル基(-Si(OR)3基)と、ハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム:Ca10(PO4)6(OH)2)の水酸基(-OH基)を化学反応(縮合反応)させることでハイドロキシアパタイトと基材が化学結合によって繋がり、複合化プロセスが完結されます(図中⑥)。

 

 

ステンレス表面へのアパタイト粒子の被覆プロセス 

 

 

このように、化学的に結合させたアパタイトは極めて強固に被覆されており、簡単には脱落しません。アパタイトを結合させたステンレス表面の写真を下図に示します。極めて均一に被覆されているのがわかります。

 

 

    アパタイト被覆前のSUS表面      アパタイト被覆後のSUS表面

 

■開発の背景・・・高分子基材上へのアパタイト粒子被膜の確立

当社は国立循環器病センターとの共同研究を通し、同じくオゾン水を利用して高分子基材上にアパタイト粒子を被覆する技術を確立しました。国立循環器病センターは、もともとオゾン水を使わずにコロナ放電処理や過酸化水素水を利用する技術を追究していましたが、当社の得意とするオゾン技術を融合させ、従来の手法に比べ簡便かつ効率的な技術に仕上げ、シルクベースのカテーテルなどへの応用を可能にしました。

一方、㈱ソフセラは国立循環器病センターの技術をもとに設立されたベンチャー企業で、ハイドロキシアパタイトのナノ粒子の製造・販売を根幹の事業とし、その応用技術の製品化開発を手がけています。

 

■本技術開発の意義と今後の方針

本技術開発は、国立循環器病センター研究所・古薗勉室長(現近畿大学)らが手がけた表面修飾技術をベースに発展させたものです。

今回の技術は、これまでの有機高分子基材から発展させ、金属表面に生体親和性アパタイト粒子を被覆させるもので、医療器具への応用は極めて広くなります。代表的な例であるステントへの応用は、埋め込んだ後に発症する炎症反応を抑制(異物として認識されにくい)するなど、患者の生活の質(QOL:Quality of Life)の改善や負担軽減に繋がると期待されています。また、整形外科分野や歯科分野への応用も考えられます。

今後は、今回検証したステンレス(SUS304)にとどまらず、医療用デバイスとして用いられている各種金属、合金類へのアパタイト複合化プロセスも確立させていきます。

また、医療承認を得るために、㈱ソフセラが中心となって、近くアメリカで動物実験をスタートさせます。その後、臨床試験を経て実用化へと結び付けたいと考えています。

 

■補足

ハイドロキシアパタイトは、骨や歯の主成分で体に馴染みやすい材料ですが、それ自体は硬くてもろいのが欠点で、そのままでは体の柔らかい部分には使い辛いものです。その欠点を補う目的で、このアパタイトをナノスケール(1ナノメートルは1メートルの10億分の1の長さ)の細かい微粒子にして、やわらかい素材や曲げを必要とする素材の表面に強く結合させると、アパタイトの短所である脆さを打ち消し、長所である生体親和性機能を発現させることができます。アパタイトのナノ粒子を品質よく製造する技術を㈱ソフセラが有しています。

 

ハイドキシアパタイトのナノ粒子(ソフセラ提供)

 

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